お笑い雑学

業界用語「マンキン」の意味と由来

業界用語「マンキン」の意味と由来

テレビやYouTubeの番組で、お笑いの世界の業界用語として、「マンキン」という言葉を耳にすることがあるのではないでしょうか。

主に芸人さんが使用し、「(ギャグなどを)マンキンでやる」「マンキンでスベる」といった使い方がされます。また、芸人さんだけでなく、テレビプロデューサーの佐久間さんも使っていたので、バラエティの業界全般で使われている言葉のようです。

それでは、このマンキンという言葉の意味や由来とは、一体どういったものなのでしょうか。

マンキンとは、「本気で取り組むこと、全力でやること」を意味します。「ネタが途中滑っていても、最後までマンキンでやる」といった使い方がされる、お笑いの世界で使われる業界用語です。

お笑い以外の分野であったり、日常で使われることは基本的にありません。

この「マンキン」という言葉は、吉本新喜劇の小籔千豊さんが使い始めた造語で、「まるで漢方の万金丹まんきんたんを飲んでいるかのように元気一杯でやる」といったニュアンスに由来します。

万金丹とは、江戸時代に旅の常備薬として重宝され、武士が腰に下げていた印籠にも入っていた、主な効能として胃腸の不調を改善するとされる伝統的な漢方薬です。

萬金丹は、江戸時代、旅の道中に常備する万能薬とされていましたが、主に胃腸の不調を改善するもので、その効能は、食欲不振、消化不良、胃弱、飲みすぎ、食べすぎ、胸やけ、胃もたれ、はきけ(胃のむかつき、二日酔い、悪酔、悪心)などとなっており、又、配合されている生薬には、下痢、腹痛にも効果があり、その用途は幅広いものでした。

出典 : お伊勢さんの霊薬『萬金丹』

要するに、マンキンとは、薬の名前の略称ということになります。

お笑い界の業界用語としては、なかなか渋い出自を持っている「マンキン」ですが、一体いつから使われているのでしょうか。

マンキンは、割と最近使われるようになった流行語や業界用語のような印象を抱く人もいるかもしれませんが、実は歴史は結構古く、すでに20年近く前には使われています。

たとえば、2004年のYahoo!知恵袋でも、「マンキンは関西弁なのか、どういう意味なのか」といった質問が寄せられています。

私は関西の芸人さんが好きでよく見るのですが、 『マンキン』って未だにどういう意味か分かりません。 関西弁なのかなとは思うのですが…。 どういう意味なのでしょうか?

出典 : マンキンの意味|Yahoo!知恵袋

関西の芸人さんがよく使っていることから、「マンキン」という言葉を関西弁など方言の一種だと思っている人もいるようです。

しかし、マンキンは関西弁など方言の要素は一切なく、あくまで小籔さんが作った造語です。

起源に関しては、今から20年以上前、銀座7丁目劇場で、東京の吉本芸人と大阪の吉本芸人がネタで闘う、といったイベントがあり、その一環でモノボケがあった際、若手時代のペナルティのワッキーさんが、どんなに滑ろうとも前に出ようと果敢に挑んでいったそうです。

後に楽屋に戻り、小籔さんが、ワッキーの前に出る姿勢に大阪は負けた、あいつは万金丹でも飲んでいるんじゃないか、ドーピングしているんじゃないか、だからあんなに滑っても前に出れるんじゃないか、といった話になったことから、「全力でやる」ということを「マンキン」と呼ぶようになったとのこと。

最初は、小籔さんが近しい人たちのあいだだけで使っていた「マンキン」だったのですが、気づいたら他の芸人さんたちのあいだにも広がっていったようです。

動画 : 【小籔千豊】「マンキン」とは? 語源を語る【フォートナイト下手くそおじさん】

こういった背景もあるからか、マンキンは、単純に「全力でやる」という意味合いだけでなく、滑っていても、途中で折れて諦めたくなっても、最後まで全力でやる、目一杯のテンションでやり抜く、といったニュアンスを伴って「マンキンでやる」と言っている場面も少なくないように思います。

また、若者言葉やネット用語というわけでもなく、むしろちょっと上の世代のお笑い業界の人が使っている印象を受けます。

ちなみに、お笑いの「マンキン」とは全く別の意味で、漫画やアニメ作品で知られる『シャーマンキング』の略としての「マンキン」という言葉もあります。

そのため、同じ「マンキン」という言葉でも、話の文脈から、お笑い用語としてのマンキンなのか、漫画のマンキンなのか、区分けする必要があるでしょう。

ツイッターで、「マンキン」という言葉を検索すると、「シャーマンキング」の意味で使っている人が多いようです。