感想

M−1の感想 – マユリカ「ずっとキモダチ」、ともしげ「カンチョー」、令和ロマンの2本目

M−1の感想 – マユリカ「ずっとキモダチ」、ともしげ「カンチョー」、令和ロマンの2本目

漫才王者を決めるM-1グランプリの2023年は、久しぶりのクリスマスかぶり。イブの日に開催され、敗者復活戦を昼から家で観て、合間の休憩なしで決勝もそのまま観ました。

まず、敗者復活戦は、今大会から、屋内会場で行われるという変更があり、冬の寒さもあった過去の敗者復活戦と違い、屋内になることによって暖かい環境でネタができることになりました。

それから、審査方式が「サバイバル」という新ルールに変更となり、結構全体的に一新されています。

サバイバル方式とは、敗者復活戦の出場者を3つのブロックに分け、ネタを披露するたびに観客投票で面白かったほうを勝ち抜けで決めていき、各ブロック最後までサバイバルできた3組から、芸人審査員が決勝に行ける芸人を選ぶ、という形になっています。

敗者復活戦の芸人審査員は、石田明(NONSTYLE)
・柴田英嗣(アンタッチャブル)
・野田クリスタル(マヂカルラブリー)
・山内健司(かまいたち)
・渡辺隆(錦鯉)の5人です。

このサバイバル方式は、敗者復活戦の審査員たちの声を聞いていると、概ね評判が良さそうなのですが、個人的には、序盤の順番の不利の度合いが強くないかな、というのが素朴な感想でした。もともとその順番の不利を払拭するために採用されたという理由もあるのでしょうから、完璧はないのだと思いますが、なんとなくネタの記憶が薄れていくなかで、新しい順番の人の方が衝撃度も強く、面白いと感じる度合いが高まりやすくなるんじゃないかなというのは見ていて感じました。

ただ、実際には、シシガシラが、Cブロック3番目と、割に前半の順番でも勝ち上がったので、笑いの爆発の度合いが強ければ、そこまで影響はないのかもしれません。

それから、人気投票にならないか、という懸念が以前から言われていたのですが、この新ルールで、観客と芸人審査員の二重構造になったことによって、公平性や冷静な審査という面ではとてもバランスが改善されたように思います。

この新しい採点方式含め、敗者復活戦自体が、もはや一つの大会のように緊張感があり、規模もあり、しかもみんな面白い。敗者復活に、ロングコートダディや、ニッポンの社長がいて、しかも敗退してしまうのだから、ものすごい層の厚さです。

M-1の敗者復活戦のネタを観終わって、僕がおすすめしたいコンビは、ロングコートダディ、ニッポンの社長、エバース、ダイタク、シシガシラです。

この敗者復活戦から、決勝に上がったシシガシラは、敗者復活のときには「ハゲ」に関する「歌ネタ」を行って爆笑を取っていたのですが、決勝では、なぜかこの歌ネタを変更し、結果もふるいませんでした。

なぜネタを変えたのか、と残念がる声もX(Twitter)では挙がっていましたが、ネタを変えた理由について、M−1後の反省会でシシガシラ曰く、準決勝を見た際にモグライダーやダンビラムーチョなど歌ネタをするコンビがいることは知っていたから、決勝で歌ネタかぶりをしないように、(戦略的なのか、配慮なのか、どちらのニュアンスとも取れる言い方でしたが)最初からネタを変えることは決めていたそうです。

この変更に関して、千鳥のノブさんは、敗者復活のときは、みんなで行け行けという流れになっていたのに、決勝でネタを変えてスベり出したときは、ちょっとした犯罪を見ているようだった、と笑いに変えていました。

決勝は、もちろんどのネタも面白かったのですが、個人的に爆笑したシーンは、(ネタ以外の部分ではありますが)マユリカの「ずっとキモダチ」関連の絡みと、モグライダーのともしげさんの噛んだ「カンチョー」のくだり、ネタでは、令和ロマンの2本目が特に面白く、松本さんが、令和ロマンは2本目により強いネタを取っておいたのが勝因というようなことを話していたのも、本当にその通りだなと思います。

マユリカの「ずっとキモダチ」というのは、3歳からの幼なじみで子供の頃からの友達だったマユリカのキャッチフレーズとしてM-1側が考えていた言葉で、キモい友達、という意味でしょうが、この件に関して、ネタ終わりにマユリカが文句を言うというくだりが面白く、ネタ終わりの絡みでは、今大会はマユリカが一番成功していたような気がします。

ネタを披露した順番は5番目、倦怠期の夫婦を演じる漫才で、順位も4位と好成績。

ネタが終わったあと、コメントを求められた阪本さんが、「というか、キモダチってなんですか」と問いかけ、中谷さんも、「友達のつもりはあっても、キモダチのつもりはないんですけど」とコメント。

今田さんが、「そちらから言ってきたんじゃないんですか」と言うと、「キモダチでお願いします、とは言わないです。さっき初めて見て、腰抜かしそうになりました」と阪本さん。

その後、審査員の山田邦子さんがネタに好評価をつけたあと、「いいじゃん、キモダチで。キモダチが流行るかもよ」と言うと、阪本さんのリアクション待ちの空気で、「一回、言われてみてください」と苦笑混じりに返して笑いを起こすなど、この辺りの表情の作り方や演技力が絶妙でした。

また、M-1の反響の一つとして、過去に出版された二人のビキニ写真集もたくさん注文が入ったようです。

マユリカのコンビ名の由来が、それぞれの妹の名前で、阪本さんの妹がマユ、中谷さんの妹がユリカだから「マユリカ」というエピソードもなかなかです。

平子「マユリカのコンビ名はどういう意味ですか?」

マユリカ・阪本「僕の妹の名前がマユで、相方の妹の名前がユリカで、ガチャッと組み合わせました」

平子「気持ち悪~(笑)」

マユリカ・中谷「やめてくださいよ!」

平子「古代ギリシャ語で“笑い”とか、そっちかと思った」

文化放送・坂口愛美アナ「妹さんはどういう反応されましたか?」

マユリカ・阪本「本人に直接言ったことがなくて。お互い、特に妹と仲は良いわけではないので(笑)」

マユリカ・中谷「妹たちはそれぞれで気持ち悪がってるかもしれないです(笑)」

出典 : マユリカ、コンビ名の由来は妹!?|文化放送

ちなみに、M-1グランプリの2023年大会決勝の芸人のキャッチフレーズは、以下の通りです。

令和ロマン : エキセントリックルーキー
さや香 : 激情リベンジ
カベポスター : 草食系ロジカルモンスター
マユリカ : ずっとキモダチ
ヤーレンズ : ノンストップ・ウザ
真空ジェシカ : アンコントロールⅢ
ダンビラムーチョ : M-POP
くらげ : 純情!ワイシャツとアロハ
モグライダー : メジャーポンコツ

モグライダーのともしげさんのカンチョー事件は、これもネタ終わりの会話の際に、緊張したかと聞かれ、思わず「緊張」を「カンチョー」と噛んだことに会場も審査員も爆笑(審査員は一部真面目な顔を作って、「それそれ」という表情も)。

ネタが(自主練習もしていたらしく)むしろきっちり出来すぎていたこともあり、この「ミス」が逆に活きたようです。

ただ、松本さんは、モグライダーに関して、売れたこともあって「練習不足かなと感じた」と指摘し、一方、モグライダーの芝さん的には、練習しないでともしげさんのミスも含めたあたふたした様が味だと考えているようなので、この辺りはネタに関する考え方の違いもあるのかもしれません。

優勝した令和ロマンは、先頭バッターという順番の難しさを乗り越え、ファイナルに残り、しかも、ちゃんと2本目により面白いネタを残していたということで、ヤーレンズと僅差ではあったもののM-1グランプリのチャンピオンになりました。

町のクッキー工場が自動車を作る、という設定の漫才コント(1本目でしゃべくり漫才、2本目に漫才コントで優勝したい、と考えていたようです)。ボケのくるまさんがコントをしながらボケ、隣でツッコミのケムリさんが冷静に突っ込むというスタイルで、ボケもツッコミも両方面白かったです。

拍手をしかけたものの拍手が広がらなかったというボケや、吉本の社員を名乗る変な男に対して、「吉本にはこういう社員がいます」と言う最後のくだりも含めて、出てくる一つ一つが爆笑でした。

この漫才コントは、全体の構造というか形が、霜降り明星のスタイルと似てるな、と思ったので、もしかしたら参考にしているのかもしれないな、と思いました。令和ロマンのネタ作りに関しては、くるまさんが下地を考え、その基礎をもとに二人で話し合って仕上げていくということが多いようです。

まだ若いM-1チャンピオンで、令和ロマンの同期芸人には、ヨネダ2000やラランドがいます。

M-1グランプリ全体の演出に関しては、いつも結構煽り立ててかっこいい雰囲気にするのが、今大会はちょっとその辺りは地味というかシンプルだったような気がします。なぜなのかは分かりませんが、もしかしたら、敗者復活戦のほうにも力を入れ、M-1グランプリの決勝戦だけでなく、敗者復活戦と一続きの「7時間の生放送番組」、と考えて予算や労力を分散させたのかもしれません。

以上、M-1グランプリ2023年の大会の感想でした。