感想

M-1のアナザーアナザーストーリーの感想

M-1のアナザーアナザーストーリーの感想

最近、YouTubeでM-1グランプリ2022のアナザーアナザーストーリーを観ました。

アナザーストーリーがテレビで放送されたのに対し、アナザーアナザーストーリーはM-1の公式YouTubeで公開されている映像で、両者の違いは、ざっくり言えば、アナザーストーリーが、優勝後のウエストランドを軸に構成されている一方で、アナザーアナザーストーリーは、M-1ファイナリストたちの直前のリハーサルや楽屋の様子、大会後の帰り道などになっているのだと思います。

もちろんM-1は毎年観ていますが、アナザーストーリーはそれほどちゃんとは観ていませんでした。ただ、今回は優勝したウエストランドが、「アナザーストーリーがうざい」とネタ中にいじっていたので、興味を持って観ることにしました。

ウエストランド井口「M-1もうざい、アナザーストーリーがうざい、泣きながらお母さんに電話するな、優勝したよ~、じゃないよ。見てらんないから!」(M-1グランプリ決勝のネタより)

M-1の優勝から一週間とちょっと経ち、放送されたアナザーストーリー本編では、番組内で、ウエストランドを中心に、出場する芸人たちの大会への思いや軌跡などが描かれていました。番組の最後では、河本さんが妻や子供の待つ家に帰り、家族の温かなシーンが流れたあと、対照的に描かれる一人の部屋に帰った井口さん。「誰もいないから帰ってきたとてなんだよな、誰かが迎え入れてくれるわけでもないし」と、疲れたような面持ちで少し寂しげに言います。

また、井口さんが、おもむろに、母親に電話をかけるシーンも出てきます。アナザーストーリーで母親に電話をし、泣きながら優勝報告をする、という場面をネタにしていただけに、一瞬、電話をかけるんだ、と意外だったのですが、後日ウエストランドのYouTubeでの本人の話によれば、スタッフから電話するように促されたようです。

結局、電話を切ったあとも井口さんは涙が出ず、「泣く気はしないなぁ、やっぱり」と零し、それから、「まあ、ちょっとぐらいはね、親孝行したいですね」と結ばれました。

M-1グランプリ2022 アナザーストーリー

後日談として、面白いなと思ったのは、ウエストランドのYouTubeによると、アナザーストーリーで密着するスタッフが、それまでバラエティ担当だったのに、優勝後は、ドキュメンタリー担当の人に変わるそうです。

アナザーストーリーと、アナザーアナザーストーリーの違いは、その辺りも大きいのかもしれません。

アナザーストーリーは、「ドキュメンタリー」にしようとしている感がありありと出ていました。たぶん、ドキュメンタリーとしての型のようなものがあり、密着していたスタッフが、その型に仕上げようとして、「絵」を欲しがっていたのではないでしょうか。

個人的には、アナザーアナザーストーリーのほうが好きでした。井口さんも、「あれが僕じゃないですか」と言っていたように、「ドキュメンタリー」にしようという力みがないから、というのもあったのかもしれません。

密着カメラが捉えたファイナリストの素顔 【M-1グランプリ・アナザーアナザーストーリー】

実際、担当がどれほど厳密に分かれているかは定かではありませんが、アナザーアナザーストーリーに映る芸人たちは、バラエティの担当の人が密着し、芸人らしい部分を抑えようとしているから、自然体で、でも、結果として物凄い「ドキュメンタリー」になっているのではないか、という気がします(アナザーアナザーストーリーは、上の動画が一番長編で、その他に、当日の朝や、帰り道などに特化した短い動画も挙がっています)。

とは言え、アナザーアナザーストーリーも、全てがバラエティ的な要素だけでなく、心に響く言葉や場面もありました。そのなかで、いくつか挙げると、次の三つのシーンが印象に残っています。

三つの好きな場面

ヨネダ2000とメトロノーム

一つ目は、アナザーアナザーストーリーのうち、決勝戦当日の朝の様子を映した、『決戦の朝…カメラが捉えたファイナリスト達の真実』から、ヨネダ2000の本番7時間前の映像です。

楽屋のような大広間で、愛さんと誠さんが、スマホを耳の近くに持っていき、一定のリズムを聴き続けています。よく見ると、メトロノームのアプリ。誠さん曰く、「160のメトロノーム」だそうです。

M−1グランプリ2022 アナザーアナザーストーリー

これは、M-1で披露したネタで餅つきをする際のリズムを体に教え込んでいる、ということなのでしょう。確かに、リズムネタは、リズムが命で、もしリズムにちょっとでも違和感が生じれば、会場の空気がちょっとだけ変わってしまうことになり、それは致命的になります。

ヨネダ2000のネタは、一見するとはちゃめちゃのネタのように見えて、構成しかり、リズム感然り、細部にこだわっている姿勢に感動しました。


ぴろ(キュウ)「貫いた人だけが優勝できる」

それから、『ファイナリストの帰り道②  【M-1グランプリ・アナザーアナザーストーリー】』で、決勝9位という残念な結果に終わったキュウのぴろさんが言っていた言葉も、力強い決意表明でした。

ハマるかハマらないかわからないところも、貫いていくしかないんで。大事なことからは逃げちゃいけないなと思いました。

マヂラブさんも、ウエストランドさんも、ここから優勝してるんで、優勝してる人たちは、貫いている人たちばかり。

今後も、ただただ、自分たちのネタを強化、そのまま優勝できたらなと思います。また返り咲くしかないですね。(ぴろ)

出典 : 『ファイナリストの帰り道②  【M-1グランプリ・アナザーアナザーストーリー】』

順位が低かったから、ネタの方向性を軌道修正して、違うスタイルで勝負する、というパターンもあるでしょう。一方で、自信を持っている確固たるスタイルがあるなら、むしろそのスタイルを強化する、ということが大事だと、「貫いていくしかない」「ただただ、自分たちのネタを強化」する、とぴろさんは言います。

M-1グランプリ2022 アナザーアナザーストーリー

ちなみに、ウエストランドが、自分たちのスタイルを曲げずに進んでいこうと思った背景には、前回決勝に出た際に、審査員の松本さんから言われたコメントが励みになったそうです。

松本「なんかね、刺さる言葉があってすごいいいんですけど、もっと刺してほしかったな。なんか、もっと刺してくれるんかなと思って。最後まで何漫才なのかというのが見出せなかったですね」(M-1グランプリ2020、決勝で8位だったウエストランドへのコメント)

井口「決勝出させてもらった時に、松本さんが『もっと刺してきてほしかった』みたいな事をおっしゃってくださって。あれが『なんやねんこれ、全然ちゃうやろ』みたいな、こういうのはちょっとよくないなみたいな感じだったら、結構絶望というか、今までやってきたこと全部違ったんだってなりますけど、ああやって言ってくれたってことは、方向はいいんだ、これをもっと磨けばいいんだっていう感じだったんで、めちゃくちゃどんどん言うようにはなりましたね。」

堂前(ロングコートダディ )「少年堂前は、ウエストランドに入れていた」

最後に、『ファイナリストの帰り道① 【M-1グランプリ・アナザーアナザーストーリー】』で流れた、M-1グランプリ2022決勝で3位だったロングコートダディの堂前さんの言葉も、自身の少年時代のM-1への憧れと自分たちのネタのスタイルに対する葛藤が溢れる名言でした。

薄々ちょっと気付いてたんですけど、獲れない、このままやったら、チャンピオンは。ただ、それでもいいという感じで好きなネタをしていたんですよ。言うたら、正統派のしっかりおもろいのが来たときに、やはり点数は入らないと思うので、こっちは。

(中略)

僕はね、小さい頃からM-1を見てた。コントなんて、と思ってる時期もあった。M-1っていうのは、めちゃくちゃおもろい漫才師が獲るべきだと思ってるんですよ。自分が漫才師って言える自信も全然ないから、そこが、葛藤がありますね。楽しいから出たいんですけど。

ただ、幼少期堂前は、幼少期堂前も、ウエストランドさんに入れていたと思う。

飛び道具であるという認識があるので、漫才に関しては。正統派の人をふりにさせてもらってのというのはあるんでね。漫才……これやったら優勝したいっていう漫才ができたらいいかもですね。(ロングコートダディ堂前)

出典 : 『ファイナリストの帰り道① 【M-1グランプリ・アナザーアナザーストーリー】』

幼少期堂前のM-1への憧れゆえの葛藤が切ない言葉で、だからこそ余計に、ロングコートダディの漫才のスタイルがどうなっていくのか、今後が楽しみです。

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