オードリー春日はボケよりもツッコミが面白い
お笑いコンビオードリーは、今はボケが春日さんで、ツッコミが若林さんですが、当初はボケとツッコミが逆でした。
しかし、若手の頃に受けた『エンタの神様』のオーディションでオードリーのネタを見た構成作家が「春日はツッコミとして伸び代がなく、ポンコツ」と指摘。それから自分たちのネタをビデオで見直してみると、春日さんのツッコミ間違いが31回中28回。
そのビデオのなかで、春日さんが変なタイミングでツッコミをいれるのを若林さんが、そのツッコミ間違ってるぞ、とツッコミ返しした際のお客さんの反応がよく、「ずれ漫才」を自分たちのスタイルに(ただしばらくは突然の変化に周囲の評判はいまいちだったようです)。
こうした経緯を経て、春日さんはオードリー不動のボケとしてM-1でも輝き、その後もお笑い界で唯一無二の存在感を発揮します。
最近のgoo調べの一番面白いボケ芸人ランキングでも、全芸人のなかで第10位でした。
- 富澤たけし サンドウィッチマン
- 松本人志 ダウンタウン
- 大悟 千鳥
- 塙宣之 ナイツ
- 岡村隆史 ナインティナイン
- 博多華丸 博多華丸・大吉
- 山崎弘也 アンタッチャブル
- 太田光 爆笑問題
- タカ タカアンドトシ
- 春日俊彰 オードリー
そうそうたるメンバーです。
このランキング結果に、相方の若林さんもさぞ喜んでいるかと思いきや、ラジオ『オードリーのオールナイトニッポン(2020.1.11)』のなかで「辞退しよう」と反論。
若林さんの言い分は、「春日はボケたことがない」というものでした。
春日さんは「変な言い方や顔」をするか、アイディアマンのスタッフから追い込まれて「アクシデント」が起きるだけ、と。
ボケと、「変な言い方」や「アクシデント」の違いとは一体どういった点にあるのでしょうか。
若林さん曰く、しっかりフリを効かせ、本来ならそうなるはずだった流れから意図的に逸脱した言動をし、ツッコミによって意味が通ることが「ボケ」とのこと。
その角度から言うと、「春日は一回もボケたことがない!」と主張(「春日のことをつまらないと言いたいんじゃなく、春日は面白い、ただボケたことはない」)。
このコメントに、リスナー陣から、これはボケではないですか、と様々なメールが届きます。
たとえば、ラジオ内で全裸になることは? という質問に、あれは企画案で全裸になるように、という指示が出て全裸になったので、「ボケではなく、真面目」、と返答。
もしボケにするなら、逆に服を着ないとボケにならない、全裸になれと言われ全裸になるのは常識から常識、と若林さん。
漫才のときゆっくり歩いてくる、というのも、クラウチングスタートで全速力で走ると見せかけてゆっくり歩いてきたらボケだが、あれはただ「ゆっくり歩いている」だけ。
カスカスダンスもボケではなく「ダンスの一種」とのこと。
春日は一切ボケない。でも、ボケないのにボケ芸人として残っていることに誇りを持っている、と若林さんは決してディスっているわけではないようです。
言われてみると、確かに春日さんが自分でフリを効かせ(あるいは周囲のフリを使って)、上手に裏切ってからツッコミが入り完成する、という流れはあまり見ないかもしれません。
どちらかと言うと、変な声を出したり、変な顔をしたり、また無茶振りに真面目に答える、ということが、その風貌やピンクベストのおかげですでにボケになっている(存在がフリそのもの?)、ということなのかもしれません。
しかも、その濃厚なキャラクターが不自然なら重くうるさいのですが、意外に自然ですっかり馴染んでいる、ということが春日さんの特異性なのでしょう(普通「キャラ」はしんどくなって飽きられます)。
若林さんは、「若手の頃ボケとツッコミを変えるとき、ほんとうは怖かった」と言います。「なぜなら、高校時代から春日がボケたのを一度も見たことがなかったから。それでも変えなければいけないくらい俺たちはスベってた」。
だから、春日さん自身意図的にボケないといけない「大喜利ボケ」も苦手のようです。
ちなみに、(本気かどうか分かりませんが)若林さんは春日さんがツッコミがうまいと言っていましたが、ラジオではテレビよりも自由に振る舞っていじったり毒づくやんちゃな若林さんを、春日さんのツッコミやリアクションがちょうどよく中和していて強弱も絶妙で面白いと僕も思います。