作品の感想、レビュー

『ドキュメンタル』最新シーズン7で面白い芸人は?(ネタバレあり)

Amazonの定額見放題のプライムビデオで配信中の『ドキュメンタル』の最新シーズン7の感想と、特に面白かった芸人を紹介したいと思います。

『ドキュメンタル』最新シーズン7で面白い芸人は?(ネタバレあり)

Amazonプライムのサービスの一つ「プライムビデオ」では、松本人志さん発案の『ドキュメンタル』を観ることができます。

ドキュメンタルは、松本人志さんに選ばれた10名のお笑い芸人がガチンコでぶつかり合い、笑ったら負け、というスタンス。

少し似たようなスタイルとしては、ガキ使の「笑ってはいけないシリーズ」があります。

毎回一人ずつが参加費に100万円を用意し、最後まで笑わなかった優勝者が賞金1000万円を手にします。

4月から、この『ドキュメンタル』の最新版であるシーズン7が配信されたので、今回は、『ドキュメンタル』の感想をざっくりと〈ネタバレあり〉で書きたいと思います。

『ドキュメンタル』最新シーズン7の感想

『ドキュメンタル』最新シーズン7の出演芸人は以下の10名です。

『シーズン7』出場芸人
  • 宮迫博之(雨上がり決死隊)
  • たむらけんじ
  • ハリウッドザコシショウ
  • 小籔千豊
  • 後藤輝基(フットボールアワー)
  • ハチミツ二郎(東京ダイナマイト)
  • 加藤歩(ザブングル)
  • ノブ(千鳥)
  • みちお(トム・ブラウン)
  • せいや(霜降り明星)

メンバー的には、これまでと比較すると過去最高に豪華メンバーで、なにより安心して見れる出演陣でした。

攻撃主体で空気を壊して去るのではなく、ちゃんと受け身をとって変な空気にしないように対処できる実力のある中堅・ベテラン勢(宮迫、後藤、小藪、ノブ)が揃っているので、ひとつのお笑い番組として非常に安定感がありました。

実験的な刺激よりも、安心して笑える、というのが好みなので、この『ドキュメンタル シーズン7』は、その点では非常に「安心して笑える」番組で、このメンバーでアメトークが見たい、と思えるような雰囲気でした。

さて、この回で結構賛否両論物議を醸しているのが、ザブングルの加藤さんです。

ツイッター上でも、加藤さんへの批判は結構多かったようです。

加藤さんが、とにかく攻撃的に単発ネタを繰り出すのですが、必ず終わりがなく、ぶっちゃけ「鬱陶しい」「つまらない」と批判されるのも、これは仕方がないと思います。

毎度毎度、全てをすべり芸のような形に持っていこうとするのですが、そのすべり方が、確かに絶妙に腹立たしい場所に着地します。

もしかしたら、他のバラエティ番組であれば、共演者も協力的に加藤さんのすべりを引き立てて、一つの形にしてくれるのかもしれませんが、『ドキュメンタル』では一応お互いにライバルですし、また同時に『ドキュメンタル』を一つの作品に仕立てるために面白い空間にしたいという緊張感もあり、微妙に出演者も加藤さんに困っている感じが伝わってきました。

一方で、加藤さんが思ったよりも面白い、という感想もありました。

この意見も、これはこれで分かるような気もします。もっとつまらない印象があったので、思っていたよりは面白かった、という風にも言えるかもしれません。

攻撃する人が、主に加藤さんとハリウッドザコシショウ(ときどきハチミツ二郎さん)の二人で、他のメンバーが二人のリアクション(受け身)を頑張る側に回っていたのが、もったいないな、と思いました。加藤さんの引き立て役にするにはあまりに豪華すぎるメンバーでした。

これも「実験」と松本さんが言っているように、『ドキュメンタル』の性質上仕方がないのかもしれません。

普通のバラエティ番組なら、全体の空気を読んで一歩引いたりしながらその空間をひとつの作品として提供する〈共同作品〉みたいな面があります。

また、後輩が遠慮したり、盛り立てたり、実力のあるひとが上手にコントロールしながら調和が保たれるのですが、『ドキュメンタル』の場合は勝負でもあり、それゆえ若手や経験の少ない芸人さんほど空気を壊すチャレンジをし、逆に空気の読める経験豊富なベテランほど守りに入ってちゃんとリアクションをする、という方向に回ってしまいます。

結果、残っておいてほしい実力あるメンバーがその実力ゆえに脳内ツッコミ混じりに笑ってしまい、いつも同じような形で終わりに向かう、というのが、「マンネリ化」と言われる要因ではないかと思います。

ハリウッドザコシショウは、確かに面白いのですが、「上質なザブングル加藤」という感じでした。

どうしても力技が有利になる傾向にあるようです。

力技では、このハリウッドザコシショウと加藤さん以外に、トムブラウンのみちおさんも勝負を仕掛けるかな、と思ったんですが、ほとんど見せ場はありませんでした。

これは、経験の問題や周囲との関係性の浅さも大きいのでしょうが、空気を読んで、その空気をうまく壊すのではなく、単独で目立つことをする、という傾向にあって、単なる「無茶」をしているように映りピンと空気が止まってしまっていました。

僕が面白いなと思ったのは、もともと好きだったというのもありますが、霜降り明星のせいやさんです。

せいやさんも、それほど大きな見せ場があったわけではありませんが、アホの坂田師匠のモノマネは絶妙に危ない橋を渡りきってだいぶ面白いシーンでした。

爪痕、と言うなら、あれはしっかり爪痕を残したと言えるでしょう。

せいやさんのアホの坂田のモノマネは、そのモノマネのクオリティそのものよりも、即興で思いつく先輩(坂田師匠から見たら後輩)へのいじりのワードが抜群で、その言葉選びが結構な場所をえぐってきます(せいやのモノマネレパートリー)。

それが、ぎりぎり引いたり怒らせたりせずに笑えるポイントをつくので、この辺りはやはり怖いもの知らずの若手とは言え実力があることを感じさせてくれます。

感想としては、こんな感じでしょうか。

ベテランの実力者たちは、特に目立った笑いは提供しませんでしたが、彼らの一言やリアクションのおかげで面白い空間になったとぼくは思います。

空気を重んじる日本のお笑いで、勝負(それぞれ単独のネタの賞レースとは違い、混ざりながらの勝負)するというのは、矛盾のなかの闘いのような気がします。周りとひとつになりながら、周りを出し抜く、というのは至難の技で、こうした点も含めて『ドキュメンタル』は「実験」なのでしょう。